ご提案とお願い
「フォトコンテスト応募要項に関わる写真著作権の帰属について」
フォトコンテストの主催者向けに、「応募要項に関するガイドライン」を設けました。
これは、応募要項を作成する際の参考となるもので、応募者の危惧する著作権の明記、主催者の利用目的および使用条件等の記載、応募要項の用語の統一などにより、応募者との誤解やトラブルを少なくすることが目的です。
ぜひご活用下さい。
フォトコンテストの応募要項を作成するにあたってのお願い
平素は写真著作権と文化の発展にご高配を賜り、ありがとうございます。
近年、写真愛好家やコンテストの主催者から「応募作品、入賞作品の著作権は誰に帰属するのか?」といった問い合わせが当協会に数多く寄せられています。
こうしたことを受けて、当協会におきまして、全国の「フォトコンテスト」の応募要項、応募に関する問題点の実態調査を行ったところ、用語の用い方や著作権保護の観点から不適当な規定などが散見され、応募者、主催者の双方に誤解や混乱が生じていることがわかりました。とりわけ、ここ数年、入賞作品に留まらず応募作品すべての「著作権が主催者に帰属する」といった記述や、包括的に「著作者人格権の不行使」を求める記述が見受けられます。
日本写真著作権協会では、フォトコンテストの主催において、応募要項には「応募作品の著作権が、撮影者にある」ことを明記していただいた上で、入賞作品の利用に関しては、利用目的や態様を具体的に特定するとともに、利用内容に応じて利用期間を一定の期間に限定することを推奨しています。
そして、こうした内容の応募要項の場合、要項記載の利用目的や利用期間等に含まれない利用については、撮影者から事前に許諾を得るよう、お願いします。
また、著作物の改変や氏名表示を含めた「著作者人格権」の不行使を無限定かつ包括的に応募者に求めることは、著作権法の目的である著作者の権利保護の観点に照らして望ましいものではありませんし、改変などを巡るトラブルは少なくありません。改変などが生じる場合には、応募要項の段階で具体的にその内容を明記するか、都度著作者と相談の上、同意を得るようにしてください。
日本写真著作権協会の推奨する「応募要項」例を下記に掲載しますので、ご参考にしてください。
「応募要項」(例)
01.応募作品の著作権は、撮影者に帰属*します。
*著作権法上、著作権は著作者に帰属するのが原則であり、写真の場合は、撮影者に帰属することが原則です。何らの対価もなく、一方的にこれを主催者に帰属させることは著作権法の精神に反しますし、近時は、「炎上」と呼ばれる事態に発展することも少なくありません。
02.入賞作品の撮影者は、主催者に対し、主催者が催す展覧会での展示のほか、制作する作品集、パンフレットなどに掲載する目的で、入賞作品を●年●月●日より○年間*利用することを許諾します。お預かりしたデジタルデータまたはプリント等は上記期間満了後、速やかに削除・廃棄します。このほか、入賞作品は本コンテストの広報活動に必要な範囲で、新聞、雑誌、テレビ、ホームページなどで利用することがあります。入賞作品の利用にあたっては撮影者の氏名表示*を行います。
*利用期間を記載してください。通常の利用期間としては2年程度、アーカイブ(過去の受賞作品や受賞歴などの紹介に限る)については5-8年程度が目安です。
なお、アーカイブは公開のみで、ポスターや展示などで使用する場合は別途撮影者にご連絡ください。
*著作者人格権に基づき、氏名表示をお願いします。作品利用についての詳細は、参考”著作者人格権について”を参照下さい。
03.主催者は、応募作品を第三者に営利目的で利用させることはありません。営利目的で利用する場合には、撮影者に事前に目的、条件(有償、無償)を説明した上で、許諾が得られたものについてのみ利用します。
04.受賞作品が他のコンテストでの入賞や印刷物、展覧会などで公表されていることが判明したときは、主催者は受賞を取り消すことができます。
05.人物を主題にした作品の場合は被写体の人物から了解を得てください。
06.応募作品が「合成または加工された写真」である場合は、その旨を明記して下さい。
*「合成または加工された写真」の応募の可否、加工された写真に対しての取扱いについて明示して下さい。
07.他人の著作物を利用して加工や合成をしますと、著作権の侵害*にあたる場合がありますので注意してください。
*他人の著作物を無断で複写・ダウンロードなどをして利用すると、複製権侵害に当たります。また、無断で加工・合成などの改変を行うことは、著作者人格権の侵害となります。
参考
「著作者人格権について」
著作者人格権は、著作者の人格的利益の保護を目的とする権利です。
氏名表示有無の決定(氏名表示権)、公表するかどうかの決定(公表権)、改変されない権利(同一性保持権)、この三つの権利で構成されているほか、著作者の名誉声望を害する利用が禁止されています。
著作権法は、「著作者の思想又は感情に対する表現を大切にする」ことが根底にあります。そのため、著作物の未知の改変等を含めて包括的に著作者人格権の不行使を求めることは、「著作権法」の精神に反すると考えております。
作品のやむを得ない範囲を超える改変(大幅なトリミング・合成等)が生じる場合には応募要項に具体的に明記したり、著作者と相談し個別に許諾を得たりして下さい。
「版権と著作権について」
わが国の著作権法制は、写真については明治9年に「写真版権」が認められ、明治32年「著作権法」(旧法)が公布され、昭和46年の著作権法全面改正によって「版権」という文言はなくなり、今日では著作権の概念は映画を除いて基本的に統一したものになっています。 そうした理由から、「版権」という文言は使われなくなり、「著作権」に統一されました。